日本人女性の監督デビュー作であるドキュメンタリー映画、「ハーブ&ドロシー」を観ました。
郵便局内勤のおとなしいハーブ・ボーゲルさんと、図書館司書のしっかり物の奥さん、ドロシー・ボーゲルさんは、大のアート好き。1960年代初めに自分たちも油絵を習って抽象画を描いたりしますが、ふたりは同時代の無名アーティストの作品収集を始めます。アーティストの仕事場を訪問し、アーティストと熱っぽく作品について話し合い、自分たちが気に入った作品だけを自分たちが買える予算で手にいれていく、という方法です。
今では現代アートの大御所、チャック・クローズ、フランス人のクリスト夫妻ともその頃に懇意になり、ふたりの収集したアート作品は絵画、インスタレーションを中心に4千点以上となりました。しかも、それを小さなアパートに詰め込んでいたのです。
1992年、アパートはその重みに耐えられなくなり、ふたりはその全てのコレクションをワシントンDCのNational Galleryに寄贈します。時価、何億ドルになるかというコレクションを一枚も売りに出しませんでした。Vogel Collectionとして全てを同美術館で永久に展示、保存されることを選んだのです。
このドキュメンタリー映画は、ハーブとドロシーの暮らしぶり、ふたりのアート収集への情熱、親交の続くアーティストらのインタビューを交えて構成されます。アート収集の資金はどのように蓄えたのか。ドロシーのお給料は家賃と生活費に充てられ、ハーブのお給料は全てがアート収集に使われたのだそうです。そして、作品は「地下鉄で持ち帰ることができること」が条件だったそうです。
1992年、空になったアパートですっきり生活ができるかと思いきや、このふたり、アート収集を再開します。そして今日、同じ小さなアパートは歩く場所もないくらいアートの山。その中でペットのカメ、金魚、猫一匹とふたりは幸せそうに暮らしています。
日本でも公開されるといいですね。
http://www.herbanddorothy.com/