Saturday, November 20, 2010
今日の一言@香港: A real professional transcends every boundary.
昨晩、11月19日夜、香港における「坂東玉三郎日中版崑劇、牡丹亭」の初日公演に行きました。つい最近までの東京公演を終えて、香港ではこの週末に3公演のみがあります。私が1ヶ月前に券を買おうとしたときは、ほぼ完売でした。なんとか少し中央を外れた席をゲットし、とても楽しみにしていました。
牡丹亭は明時代に書かれた伝統的中国戯曲の代表作。非常に長い作品で、全部やったら一週間以上はかかるというものですが、通常、その中の数シーンが公演されます。玉三郎さんが監督、主演をした今回の公演は7シーンからなり、公演時間はほぼ3時間(休憩2回含む)に及び、1シーンを除いて彼は出ずっぱりでした。牡丹亭のヒロイン、杜麗娘は16歳、それを60歳になる玉三郎さんがすべて中国語で演じたわけです。そして、せりふだけではなく、非常に中国的なメロディーで歌がはいり、Chinese operaといわれる所以ですが、これは歌舞伎の女形での実績に加えて相当な訓練が必要であったことでしょう。
結論から言って、感動!日本人として、涙がでるくらいの誇りを感じさせてくれました。
まず、全ての限界、全ての垣根を乗り越えた、素晴らしい挑戦という点に感動させられます。そして、当然、妖艶な美女を演じきり、そのオーラに会場が包まれていくことに感動します。3時間後の幕が下りると、香港の観衆は大歓声、大喝采、スタンディングオベーションで3回のカーテンコールとなりました。
実は、私は初めの2シーンでは、どうも玉三郎さんの日本舞踊的な動きがゆったり、もったりして、崑劇の役者の動きの中で浮き上がっているような気がしました。うまくブレンドするのかあ、いっそのこと着物で登場してビックリさせたほうが面白かったかな、という不謹慎な印象を持ちました。が、3シーン目で、話の展開が変わって杜麗娘が恋に悩んで病気になるあたりから、歌舞伎的な微妙な首の曲げ方と肩や腰の動き、アンニュイな動きが、なんだかすごい迫力になり、圧倒的なオーラを出し始めました。そこからは、もう、ぐいぐい、玉三郎の世界に引き込まれたといえましょう。
文化革命の影響で、中国戯曲では女形が廃止になってしまったそうで、玉三郎さんは昔の伝統的な崑劇を復活させるため、若手女形の育成にも力を注いでいるそうです。牡丹亭は、上海の万博をはじめ、中国で公演をしてきたわけですが、玉三郎さんは自分の出演料をとらないそうで、それも伝統的中国戯曲の復活への支援のひとつだということです。素晴らしい日中文化貢献で、これにも大拍手です。